303 Man cannot forever serve his mind - for himself. Or other minds for other men and expect to realize and enjoy a heavenly state of life.
303 人は自分自身の為にも、自分の心に永遠に仕えることはできません。他の人間の為、他の心に対しても同様であり、そうすることで悟りを得たり、天国のような生活を享受することはできないのです。


【解説】
 ある程度の年齢になると、これまでよく犯罪を犯したり、避けることができる事故を引き起こすことなく、よく自分の心に付き合って来たものだと思うものです。もっともそれ以外の相棒が居ない訳ですし、ある時は怒りが沸き上がるのを抑え、また有頂天で舞い上がりそうになる心を落ち着かせ、ある時は恐怖心で身の毛がよだつ中で冷静さを取り戻す等、未熟な自分自身によく付き合い、今日まで永らえて来たものと思います。
 本文では所詮、このような不安定な心に一生涯仕えることは出来ないと言っています。その意味は自らの愚かしい感覚心を至上なる主人として仕えてはならず、むしろ訓練すべき対象だとしているのです。おそらくは生まれたばかりの子供は、かつてルーサー・バーバンクが世の中で最も感受性が高い生き物だと言ったように、実は大変鋭敏な状態にあるとされています。最近、NHKテレビのアーカイブス「あの人に会いたい」で童話作家の石井桃子さんのインタビューが放映されていました。その中で石井さんは自分の幼少の頃、姉から絵本を読んでもらった時のその絵本のページから受けた強い印象、絵本の中に自分が一体化した体験を後年になっても覚えているとお話になっていました。
 誰でも、幼年の頃、つまりは感覚心が未発達の頃には実はこのシリーズで私達が学ぼうとしている感受性は最も高い状況にあるのではないかと考えています。再び、この感受性を高め、これまで増長してきた感覚心を再訓練して調和ある形に組み直すことが大切なのです。自ら、自我を小さくし、奉仕する側に導けば、代わりに生命の根源である意識の作用が次第に大きく、各自に現れて来るということでしょう。